case3:理容ウイング様
「守ること」と「革新すること」に悩み・考え続けた2代目オーナーの挑戦の軌跡
2代目オーナーとして受け継いだサロンを、次のステップへ。コロナ禍で試行錯誤を重ねて行き着いたのは、お客様の安心を第一に考えた10年越しの大規模リニューアルでした。
「守ること」と「革新すること」のバランスが大切だと語る理容ウイングの森オーナーが歩んだ挑戦の軌跡と、改装に立ちはだかる課題を解決したトータルソリューションの全貌。
サロンオーナーの森様ご夫妻と娘様、共に伴走したタカラベルモントの営業担当・郭山翔吾が、当時の心境や生まれ変わった理容ウイングを振り返ります。
開業:1969年4月
住所:東京都世田谷区
セット面:4席
スタッフ数:5名 (2022年12月時点)
▼サロンプロフィール
30〜50代の男性のお客様が多い、地域密着型の繁盛サロン。オーナーの娘様が理容師として働くようになって以来、学生や女性のお客様も多く訪れるように。
▼課題
コロナ禍でセット面を減らした営業に切り替え、売上が低下。
長い目で、お客様の安心を最優先した空間づくりと、売上向上の両立に向けた店舗改善を図りたい。
▼ソリューション内容
「機器」「空間」「新メニュー導入」「店販拡大」などの大規模リニューアル。
座席数を減らして空間を広くすることで、お客様が安心して過ごせる空間に。YUMEシャンプーの導入により、スパ系の新メニューを拡充することで、売上を改善。バックシャンプーが可能になり、スタッフの身体の負担軽減にも。
▼タカラベルモント担当者
営業担当 郭山翔吾。タカラベルモント東京理容営業所に所属。
サロンオーナーの想いに寄り添いながら、「今」だけではなく「未来」を見据えた提言を行い、サロンの成長をサポートする。
2代目オーナーとしての第一歩、先代の想いを次につなぐ10年の大計画。
1997年、先代の娘である奥様との結婚を機に理容ウイングに入った森オーナー。先代は「お店の内装や設備を充実させるよりも、自分の技術でお客様に喜んでもらいたい」という職人気質で、カットやマッサージをとても丁寧にする人でした。
そんな先代の仕事ぶりや情熱を感じながら、「今の自分にできることは何か」を日頃から考えていたと、森オーナーは当時を振り返ります。
お客様に満足いただくためには何が必要かを自分なりに分析して、まずは理容ウイングの強みであるマッサージを活かそうと考えたんです。当時テレビで話題になっていたリラックス系のメニューや、冷やしシャンプーをいち早く取り入れて、客単価の向上を目指しました」(森オーナー)。
メニューの拡充は常連客からも好評で、たちまち評判に。お客様が喜ぶ姿を見て手応えを感じ始めた森オーナーは、以前から構想していた10年計画の店舗改装計画に乗り出します。
この頃、以前から付き合いがあったタカラベルモントの積立購入システム「ユメイク」の検討を始めたり、将来を見据えた情報収集のために、サロン経営のセミナーやサロンメニューの体験会にも積極的に参加し、店舗改装のイメージを少しずつ膨らませていきました。
そして2013年、売上が低迷気味だったので、なんとか再生したいという気持ちと理容ウイングに通い続けていて良かった!と思ってもらえるようなお店をつくりたいという気持ちで森オーナーが正式に理容ウイングを継承。
「最初に考えたのは、どのお客様に向けて改装を行うのか、ということ。先代が作り上げた理容ウイングをずっと先まで存続させるには、今、目の前にいるお客様に喜んでいただけるお店を作ろうと決めたんです。そうすると自然と新しいお客様にも足を運んでもらえるはずだと。
そして、まずはオーナーになる前に、導入したリラックス系のメニューや冷やしシャンプーが好評だったことを踏まえ、店販品の拡充から進めてみようと思いました。男性のお客様に合わせて、メンズ向けのヘアケア商品『THEO(ジオ)』を導入したり、女性向けの『SEE/SAW』をテスト販売。特に、『SEE/SAW』は導入してみると、女性へのプレゼント用にということでリピートされる男性のお客様もいらっしゃって、私が思う以上の反響があり驚きました。理容ウイングでも女性向けの商品が売れるのだと、新しい気付きも得られました」(森オーナー)。
タカラベルモントの営業担当である郭山翔吾が前任者と共にご挨拶に伺ったのは、そんな、2020年の4月頃のことでした。
コロナ禍を乗り切る策を求めて、営業担当と試行錯誤を重ねる。
森オーナーは、現状の課題や抱えている不安を郭山に相談しました。
「感染予防対策で、座席数を5台から3台に減らして営業していたので、売上は対前年比で11%も下がっていました。お客様の安全を確保しつつ、なんとか稼働できる椅子の数を増やせないかと、郭ちゃん(タカラベルモント 郭山)に相談したんです。新しいシャンプー台を導入することで客単価の向上は見込めるものの、今の店舗状況ではスムーズな機器の入れ替えは難しいとわかり、どうするべきかと」(森オーナー)。
「同じ前洗面のシャンプー台でも、セット面数を減らし、椅子の間隔を空けて全台を稼働させるプランは作成可能でした。しかし、椅子の台数を減らすためにはライトの位置変更や、配管工事も必要になり、余計なコストがかかります。以前から全面改装の意向を伺っていたため、『今シャンプー台だけを入れ替えるのは、もったいないですよ』と、率直にお伝えいたしました。加えて、機器の入れ替えのみを行うプランと、内装も含めて空間全体を改装するプランを作成し、比較していただくことにしました」(郭山)。
コロナ禍の終息の目処が立たない状況の中、最善の策を探し求めて試行錯誤を続けた森オーナーと郭山。あらゆるプランを思案し、検討を重ねた結果行き着いたのは、やっぱりお客様が第一の“コロナ禍でも安心して過ごせる空間づくり”だったという。
コロナ禍でも通ってくれるお客様と、理容ウイングで働くスタッフが、安心して過ごせるように。
郭山は再度、シャンプー台の入れ替えも含む大幅なリニューアルプランを作成しました。
プランに盛り込んだシャンプー機器「YUME SWING」は、仰向けでシャンプーができる上、背もたれをほぼ水平まで倒せるフルフラットタイプ。乗り降りや姿勢の維持がしやすく、お客様がマスクを着用した状態でもスパメニューを施術できます。施術中はスタッフも椅子に座ってシャンプーができるため、これまでよりも長時間の施術が可能に。客単価の向上も期待できます。
試行錯誤の末に辿り着いた、店舗開業以来となる大規模なリニューアル。改装プランには納得していたものの、森オーナーには、まだ不安を拭いきれない部分があったと話します。
「本当にお客様のためになっているかと考えたときに、椅子が少なくなっただけで、お客様が体験できることはあまり変わりません。売上が上がる保証もなく、その割には投資額が大きいと感じ、踏ん切りがつきませんでした」(森オーナー)。
活路を開いたPOSデータ分析、課題解決のトータルソリューションへ。
先行きの見えない不安から、決断に踏み切れなかった森オーナー。
コロナ禍で改装を迷う背中を押したのは、サロンPOSのデータ分析があったといいます。
改装プランの提案と合わせて実施されたPOSデータの分析では、タカラベルモントのPOSチームの太田が中心となり、理容ウイングの顧客層を改めて調査。その結果、平均客単価が低い、女性客の数が少なく年齢層が高いなど、潜在的な課題が浮き彫りになりました。
見える化された課題に対して、郭山はタカラのトータルソリューションで挑みました。
「課題となっていた客単価については、新たに導入する『YUMEシャンプー』の施術メニューを増やすことで売上向上が見込めます。時短パーマを可能にする『THEOパーマ』の導入をはじめ、メンズ向けヘッド・フェイシャルスパ(THEO フレイマン)、さらには、5分間で極上の癒し体験ができる『頭浸浴』など、女性をターゲットにしたスパメニューもご提案。店販比率の改善には、レジの横に物販台を増設し、弊社の化粧品担当と連携を取りながら、お客様の年齢層に合った商品の拡充を提案しました。 そして、今回理容ウイング様が最も大切にしている、密を避けて安心して過ごせる空間は、タカラスペースデザインと連携し、ルーミングを活用した改装プランに。半個室空間となるように閉塞感のないパーテーションを採用し、先代が切り盛りしていた時代の面影も残す、柔らかい空間デザインを提案しました」(郭山)。
「このプランなら、今のお客様にも喜んでいただけるのと同時に、売上の向上も見込めるはず」そう確信した森オーナーは、大規模なリニューアルを決意。
こうして、2020年の10月1日、約20日間の改装期間を経て、理容ウイングは生まれ変わりました。
お客様が安心できる空間を何よりも重視した森オーナーに、今回の改装のポイントを伺ってみました。
「今回の改装でこだわったのは、入口に新しく設置した手洗い場。アルコール消毒よりも手洗いのほうが安心感があると思ったので、お願いして作ってもらいました。
また、改装プランを考えるときに注意したことは、『守ること』と 『革新すること』のバランスをとることです。いくら大規模なリニューアルとはいえ、私の代で全てを変えてしまっては、先代の想いを受け継ぐことにはなりません。
たとえば、お客様はご高齢の方が多くいるので、これまでとは真逆になる仰向け姿勢での洗髪を受け入れてくれるのかが心配でした。そこで妻と相談し、あえて前洗面のシャンプー台をひとつ残すことにしたんです。持病をお持ちの方の場合、仰向けだと手がしびれてしまう方もいます。すべてを仰向けのタイプに変更していたら、お客様のご要望にお応えできなくなっていたかもしれません。
新しい技術を取り入れつつ、これまでの方法も大切に受け継いでいく。先代の想いを汲んで先に進めることが、2代目オーナーの私の役割だと思いますね」(森オーナー)。
次々と生まれるお客様の笑顔と、次の世代に受け継がれる想い。
スタッフからの評判も上々で、座りながら施術できる「YUMEシャンプー」は、腰が痛くならず本当にシャンプーが楽になったと喜んでいます。メニューの拡充によってスタッフの負担が増加することも懸念されましたが、新しい技術に取り組む事ができて楽しいという声が多くを占めています。店内が明るくなり、作業スペースも広くなったので、以前にも増して生き生きと働く姿が目に付くようになりました。
頭浸浴や酵素スパのリピーターも多く、店舗の売上は2022年9月時点で、前年比121%まで伸びています。
数々の困難を乗り越えて、大成功を収めた10年計画のリニューアル。今回はその裏側にあった想いを、森オーナーの娘様である彩香様にも聞いてみました。
「祖父の理容室を父が継いで、一生懸命に働いている姿をずっと見てきました。忙しくても仕事が休みの日には一緒に遊んでくれた父の姿に憧れ、『いつか親と同じ仕事をしたい』と思うようになり、この仕事を選びました。
理容ウイングのお客様はとてもいい方ばかりで、普通なら新人にカットされるのを嫌がると思うのですが、お客様のほうから申し出てくださり、カットさせてくれます。お客様とスタッフの信頼関係があるからこその優しさだと感じています。
親への恩返しではないですが、弟も別の場所で美容師をやっているので、もし将来一緒に働けるなら、地域の人が男女関係なく利用できるサロンを作っていきたいですね。コロナ禍で閉店するお店も多い中、お店を続けることの大切さを感じる日々です。だからこそ、このお店は次につなげていきたい、そう思っています」。
彩香様は、熱く語ってくれました。
実際に彩香様が理容ウイングで働くようになってから、これまで少なかった学生や女性のお客様も増えていると語ります。普段は聞けない娘様の本音を耳にした森オーナーは、しっかりと言葉を受け取った様子で話してくれました。
「今後のことを考えて、継ぎたいと思ってもらえるようなお店でいられるように、準備を進めたいですね。理容ウイングは改装後も値上げせずに営業してきましたが、今後は値上げも視野に入れていこうかと思っています。
というのも、お客様から『まだ値上げしないの、もう上げなきゃダメだよ』とよく言われるんです。料金以上のお金を置いていってくださるお客様や、『一年分置いて行きましょうか』と言ってくださるお客様もいて、本当に人に恵まれています。
新しく取り入れるものと、ずっと残したいもの、そのバランスを考えながら、先代が大切に守ってきたお店を次の代につなげる。そしてこの先も、お客様に喜んでいただける空間づくりをしていきたいです」(森オーナー)。
コロナ禍という逆境に立たされながらも、お客様のことを第一に考え、大規模リニューアルを成功させた理容ウイング。新たに踏み出した第一歩が未来へと受け継がれるように、これからも全力でサポートしたいと思っています。
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写真=岡田久輝取材・構成=夏野久万
理容ウイング オーナー
森 和彦
1997年入社。 2013年代表に。 笑顔の輪をつなぐコミュニティー空間を創造したい。
タカラベルモント株式会社 営業担当
郭山 翔吾
2019年入社。 タカラベルモント東京理容営業所に所属。 サロンオーナーの想いに寄り添いながら、 「今」 だけではなく 「未来」 を見据えた提言を行い、サロンの成長をサポートする。
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